ここから祖母の手記です
6/3
毎日、顔を見に来ることしかできない
それでもきついと思うことはない
今日、夕方六時頃だったと思う
主人の身体が悪くなり
先生方が2、3人病室に来られ
「余命です」
と言われ
「だめって事ですか」
と聞き返す
「ハイ 今夜夜半です」
その先はなにがなんだか
朝になって自分に返る
昨日は夢でも見ていたのだろうか
弟さん夫婦も気疲れしたろうに
本当にご苦労さんでした
息子、娘にも心配をかけすまないと思う
息子の心くばりが有難かった
主人の命の火が燃えてる間
しっかりと夫婦のきずなを大切に
…もう
一度は夫婦の死別を味わった
言いようのない淋しさ
複雑な気持ちでした
白い壁の中に二人だけしかいなかった
6/4
主人が目をあけた
生き返った
あの時パニックのなかで
「注射しますか」
と言われたときに
「お願いします」
とは言わなかった
あとでゾォーとしました
先生に
「後で後悔したくありませんから」
と言ったみたい
「では血圧を上げる注射をします」
と先生は言って
それから身体が温かくなって
元にもどった
なんとも言いようのない一日でした
真っ黒い一日だった
血圧を上げる注射があるのなら
はじめからその様にしてくださればいいのにと思い
「余命です」
と言った先生はしばらく病室に来なかった
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